シマノの中〜高価格帯ベイトリールに採用されている『マイクロモジュールギア』。
巻きごこちのノイズレスさが売りとなっているこのドライブギア(メインギア)ですが、『グリス切れが早い、すぐノイズが出る、ゴリゴリする、シャリシャリする』なんて話は結構耳にしたことがある方も多いはず。
そんなマイクロモジュールギア、噂のようなものはいくらでも流れてきますが、ほんとんとこはどうなのよ?と思ったり思わなかったり…
というわけで今回はマイクロモジュールギアが酷使されるとどうなるか?という部分を考えます。
先輩の16メタニウムMGLをお預かり
シマノ推しの私ですが、冒頭にも書いたとおり、『マイクロモジュールギアは使用していくうちにノイズが出てくる』というのは確かだと思っています。
ただ、自分の場合はわりとちゃんとメンテナンスをする方なので、そこまで酷い状態になるということはまずありません。
ですが、自分でまめにベイトリールを分解してメンテナンスをするなんてことは、実情ほとんどの人はやらないかと思います…となると、どうしてもギアやベアリングなど駆動部のダメージは蓄積されてしまいます。
先日、ホーム河川で普段色々とお世話になっている先輩から『ちょっとリールの調子悪いから見てくれない?』と渡されたものがまさにそういった状態でした。

年間釣行300日といっても大袈裟ではない先輩のリールですから、それ相応の覚悟はしておりました。
が、ハンドルを回した瞬間、「あぁ、これはかなりキテるなwww」と悟りました。
かつて出会ったことのないレベルのゴリッゴリ…笑
ジュラルミンMMギアが欠けまくり
というわけで早速帰宅後、その日うちに16メタニウムMGLをあけてみることに。

外側から掃除できる部分は完了したため、いざ、分解作業へ。
はい、ヤバイ!!

え~っと、凄いですね…マイクロモジュールギアが欠けまくっています。苦笑
まぁ16メタニウムMGLは他の先輩のものもメンテした経験があるので、予想はしていましたが、思った以上に酷かったです(^_^;)
こんな感じ。(歯先が欠けているのがわかるでしょうか)
はっきり言ってジュラルミン(アルミ合金)は軽いという大きなメリットがある反面、強度面でかなりデメリットがあります。マイクロモジュールギアの場合は歯厚が薄くなるわけですから、その影響は特に…ですよね。
16メタニウムMGLからモデルチェンジした「20メタニウム」では軽さを捨ててブラス(真鍮)ギアに回帰していますから、これはシマノとしてもデメリットとして認識していると想像します。

みなさんお待ちかね、20メタニウム着弾です!! 早速ですが、分解して内部構造公開しちゃいますよ。笑 20メタニウム(右ハンドル)着弾 はい、というわけで皆さん首を長く長くして待っていたであろう、シマノ2020 年モデルの最注目株「[…]
マイクロモジュールギアがゴリる原因
さて、ジュラルミン製マイクロモジュールギアが酷使された状態を確認してきましたが、よくベイトリールの不具合で「ゴリる」とか「シャリる」というワードが出てきますが、実際これが、メインギアがどうなると生じるようになるのか?ということはあまり情報を見かけない気がします。
今回先輩から預かったリールをいじってみて、「あーなるほどーそういうメカニズム(原因)か。」と確認できたことがあるので、実例から解説してみたいと思います。
※後述しますが、これらのノイズ発生が「全てギア由来で起きる」というわけではありませんからご注意ください。
歯が曲がる・歪む
まず第一段階。
ギアへの負荷がかかるような使い方をし続けていると、ドライブギアの歯先が曲がり、歪みが生じます。
ドライブギアのノイズはメインシャフトを通じてハンドルへダイレクトに伝わるので、敏感な人ならこれだけでもハンドルを回すとノイズを感じるかもしれません。
歯が欠ける・削れる→歯溝が詰まる
ドライブギアへのダメージがさらに蓄積されると、歯先が削れたり、ボロっと欠けたりします。
そして、それが歯溝に詰まっていき、溝を埋めてしまいます。
この「歯溝への詰まり」が、いわゆる「ゴリ感」の最も大きな原因になっていると思われます。
というのも、この歯先が何か所もボロボロにかけたドライブギアでも、歯溝の詰まりを徹底的に取り除いで、歯が歪んでいる部分はヤスリで整えるなどしてやったら、ゴリ感的なものはかなり解消されたんですよ。
ベアリングやワンウェイクラッチなど他の駆動部を徹底洗浄する前に仮組して試運転してみたのですが、まぁ当初の状態から比較したら相当なノイズ軽減になっています。(自分の感覚的には「まぁ普通には使えるかなぁ」くらいのレベルまで改善)
こんな歯先が何か所もボロッボロになっているドライブギアでも歯溝がキレイなら案外大丈夫なんだ…と驚きましたね(^_^;)
※もちろんドライブギアに蓄積されているダメージはそのままですから、このギアを使い続ければまだ歯が欠けたりして同じことを繰り返すと思いますけどね。汗
というわけで今回預かった16メタニウムに関しては、ドライブギアの歯の削れカスや欠けた破片が、古いグリスと合わさって歯溝に固着して詰まらせていたことが、ハンドル回転時にノイズが発生する最大の原因だったと結論付けました。
マイクロモジュールギアのゴリ・シャリ対策
そんなわけでここまでジュラルミン製マイクロモジュールギアにダメージが蓄積されたまま放置するとどうなるのか…ということを見てきましたが、当然ながら、こんな状態になる前に手を打つのがベターです。笑
ギアの不具合を未然に防ぐには、やはり小まめな洗浄とグリスアップが一番効果的です。
マイクロモジュールギアは特にグリス切れが早いと良く言われていますから、「硬めのグリスでしっかりたっぷりグリスアップしてやる」というのがいいかなと考えます。
自分がドライブギア周辺に普段から使用しているのはボアードの「DELTA」です。
その他、もう少しお手頃なところだとシマノのプレミアムグリスも使っています。
糸を引くくらいネットリしている特徴のあるグリスなので、「シマノのマイクロモジュールギアとは相性が良い!」という方も結構多いですよね。
原因はギアだけではない
ここまで書いておいてなんですが、一応誤解なきよう付け加えておくと…
マイクロモジュールギア搭載のシマノリールからノイズが発生してくると『これだからマイクロモジュールギアは…』と何でもギアのせいにされがちですが、実際のところ、リールの巻き心地はそれだけで決まるものではありません。
レベルワインド周りのクロスギアや、ドライブギアシャフト周辺のベアリング・ワンウェイクラッチ、スプールシャフトを支持するベアリング、そしてそれらのパーツの組み上げ方など…巻き心地は様々な要素で変化します。
極論、リールの個体差だってありますからね…18バンタムMGLでもめちゃくちゃシルキーな巻き心地が継続する個体もあれば、自分のヤツのように何度手を入れてもすぐに『ウィンウィン』とノイズが出てくる個体もいるし…泣
18バンタムMGLと同じドライブギアを採用している20メタニウムに関しては、自分の使っているものはかなりシルキーだし…っていう。謎
まぁジュラルミン製マイクロモジュールギアの強度に関しては全く擁護しませんけどね(汗)、何でもマイクロモジュールギアを悪者にしたがる人が多い気がするので付け加えておきました。
まとめ
ということでまとめ。
- ジュラルミン製マイクロモジュールギアは酷使され続けるとボロボロになる。
- 巻き心地のゴリ感は、歯溝に削れたり欠けたりしたギアが詰まることで強く出る。
- ギアにダメージが蓄積されないよう、MMギアに合ったグリスで小まめにメンテナンスしよう。
こんなところですかね。正直、自分では絶対にこんな使い方をしないので、今回先輩が酷使に酷使を重ねたリールを分解させてもらえたのは非常に勉強になりました。笑
パーツの取り寄せが完了し次第、ギアを新調して、しっかりメンテナンスしてお返ししたいと思います♪
これまで「いやもちろんグリス切れとかオイル切れはアウトだけど、どのオイルもグリスもちゃんと使っていればそんな変わらないでしょう…」という考えだったみかんさん。 しかしついに手を出した高級オイル&グリス、その理由は?そしてその効果は? […]
おまけ。
先輩から16メタニウムMGLと一緒に受け取った、もっともっと酷使されて、もうほぼハンドルもクラッチもまともに動かない01カルカッタコンクエスト101がこちら👇
絶句するほどのレベルです…笑
そしてこれを分解して洗浄が完了した状態がこちら👇
はい、ピニオンギアにもドライブギアにも全くの破損・不具合なし。
まぁ、そういうことですよ。笑